上野毛の家

(2008年8月竣工)

作品写真(撮影:GlassEyeInc. 海老原 一己)2008.09.06

多摩川沿いの国分寺崖線の高台にある風致地区に該当するこの敷地は、東側と南側に2つの前面道路をもつ緑豊かな周辺環境の立地である。容積はもちろん敷地条件を最大限に活用してほしいという施主の要望から、まずは建物の大きさと配置を、南北境界からの壁面後退ラインで決定された最大6Mの奥行きに、東西境界から敷地の余白を機能的に確保することの配置を決めた。南側前面道路が、区の管理道路でありすぐに袋小路になっているため専用の引き込みアプローチとして活用できることを考慮して、東側前面道路から離れた西側の余白にカーポートとエントランスを人と車の動線として配置することができた。そして、残りの東側の余白部分とどのようにして、内外空間を一体化できるテラス庭空間になるかと考察していく上で、今回の全体設計の輪郭を捉えることができた。施主の要望のもうひとつに、この地での近隣とのふれあいや気配、そしてコミュニケーションを大切にした、地域と家との関係をかたちにあらわしてほしいという命題がある。ゾーニングとしては、開放された1階の大空間(セミプライベート)⇔テラス庭(セミパブリック)⇔近隣環境(パブリック)という3つの境界をいかに自然に連続させるかということである。ここではまず構造的に1階内部を6m×8mの無柱空間としてテラス庭に大きな掃き出し開口として、屋根付きのテラスを東・南2方向に設けた。家族の大切な一員である大型犬がいるため、人も犬も内外空間は常に連続していることが大事な暮らしの動作である。また、そのテラスを囲む緑の木々と菜園と道路を隔てる塀は、コンクリートとウリン材の縦格子で交互に建て込み、ちらちらとお互いの領域を認識できるものにしている。こだわりがないという施主のこだわりの中から生まれてきたかたちは、近隣との難しくもあり楽しくもあるという人との関わりをあらためて再認識できたとともに、この家に暮らす施主自身の人柄がそのまま表出しているようで、これからの暮らしの風景を想像すると、設計者としてたいへん嬉しく思える。

地下1階地上2階建て(RC造+木造)
延床面積:198.00m²(59.89坪)
建築面積:72.00m²(21.78坪)
敷地面積:181.91m²(55.03坪)
家族構成:夫婦+子供1人+犬1匹